同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題 その2

はじめに

 「同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題 その1」の続きになります。同人誌の転売禁止・オークション出品禁止について、思った以上に反響があったので、前回の補足・追加ということで書いてみたいと思います。なお、文中の用語は、以下の通りとします。 
 「転売等」・・・転売、オークション出品など
 「転売禁止等」・・・転売等を禁止する措置のこと
 「同人作家」・・・同人作家やサークルのこと
 「その1」・・・「同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題 その1」


慣習法として成立するための要件

 「その1」では、「転売禁止等」が常識化されたルールであるということに触れ、慣習法として「転売禁止」が成立する余地があることを説明しました。しかし、ここで問題になるのは、「転売禁止等がそもそも常識化されたルール」つまり、法源たる慣習法となりうるのか、という問題です。「その1」ではそのあたりの説明が不十分であったため、ここで若干補足いたします。
 まず、「転売禁止等」の措置を掲げる同人作家が、相当数存在するということについて「常識化」されていることは争いのないところかと思います。その上で、「転売禁止等」のルールを掲げる同人作家が相当数いることそれ自体は、参加者として常識ではあるけれども、「転売禁止等」の仕組みそれ自体同人世界全体にとって常識化されているかどうかは、個々の参加者等の解釈になると思います。といいますのも、転売等を容認すべきという動きもそれなりに存在し、同人世界の内外からそうした転売禁止等にたいして批判されていることもあるからです。
 つまり、「転売禁止等」それ自体が慣習化されているわけではなく、転売禁止等の措置を採る同人作家たちが多数存在することが、慣習化されていると考えることになります。

 そうなると、慣習法として「転売禁止等」が保護されるためには、少なくとも実際に買う前に、買い手(頒布先)が、「転売禁止等」の措置があることを知る機会のあったことが必要になるわけです。


どの程度「転売禁止等」を明記すれば十分なのか

 ここからは解釈の分かれるところでしょうし、個別具体的な状況にもよります。まず、もっともオーソドックスな方法として、奥付に記載する方法です。これは、頒布現場で立ち読みができる状況であれば、慣習法としての契約の拘束力を認める要素にはなります。それは、上記の「転売禁止等」のルールをもうける同人作家が相当数いることは常識であり、参加者である以上「奥付を見れば転売禁止等が書いてあること」は知っているはずだからです。もっとも、一般と同人の境目が薄れてきた現代において、「同人誌即売会への参加」をもって、このような強権的なルールを押し付けることは批判のあるところです。この辺りは、購入者の属性(サークル参加者、イベント参加経験)や、即売会の性質、参加案内等の記載にもよるので、まさにケースバイケースというしかありません。
 
 POPその他見えるところに、「本サークルの頒布物はすべて転売禁止です」などと、掲示するということもありうるでしょう。どのくらい見やすい形で掲示しているかにもよりますが、同人誌本体に直接「転売禁止等」が明記していなくても、転売禁止等の効力は認めてもよいという方向になります。後日の紛争防止のため、入場開始前後にスペースを写真で撮っておくことはおすすめします(主催者の承諾はとってください)。それと合わせて、奥付に記載しておくとより確実かな、という感じです。

 pixivやツイッター等SNSで事前告知していた場合ですが、これも事前に買主が知っていたら法的拘束力を認める方向になるでしょう。たとえば、「pixivみて来ました」という方はそれなりにいるので、転売者がpixivのブックマークないしは「いいね」をつけていれば、事前に転売禁止等を知っていたことを認定する要素にはなるでしょう。

 いずれにしましても、個別具体的事情によってかわるところかと思います。

実際の法的手続

 おそらく、ここがもっとも難しいかと思います。まず、転売者の身元がわかっているというケースは多くないので、前提として転売者特定のための手続が必要になります。なお、同人誌の転売問題はあくまで民事ですので、警察は無関係(民事不介入)です。
 転売者を特定したとして、次は訴訟手続(交渉や調停等も含みます)ということになりますが、よほど荒稼ぎしていない限り、転売者の法的責任が認められても損害額自体は低くなります。なお、奥付等に「転売した場合は10万円の罰金」などと同人誌本体より著しく高額な罰金(制裁金)を記載しても、おそらくは無効でしょう。また、「弁護士費用その他手続に要した費用はすべて請求する」とあっても、その全額が認められるとは限りません。
 もっとも、表紙掲載の部分で、著作権侵害を主張する事も可能です。詳しくは、「同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題 その3」をご覧ください。

その上でどうすればよいか

 これまで述べたように、転売被害者が個々に対応するのは難しいかと思います。その上で、「同人誌転売被害者の会」を結成するなど、大規模化・組織化したうえで、組織として行動するということはありうるかもしれません(訴訟当事者になることは難しいでしょうが)。組織が大規模化すると、関係機関との連携・協力も容易になるでしょうし、転売等に対する抑止にもつながる可能性もあります。
 また、「同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題 その3」で述べたように、表紙掲載の部分で争うこともできます。
 そうした点も含めて、同人誌の転売問題について、ウィステリア・バンデル法律事務所にご相談ください。

(2021.01.15 加筆・修正)
(2019.04.30)

 

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