はじめに
ウィステリア・バンデル法律事務所では、同人作家・同人誌に関する法律支援などあまり他の事務所で取り扱っていない事件等を取り扱っていますが、トラブルの中には、相手方の説明責任や謝罪要求など、必ずしも金銭目的ではないものもあります。そういった場合にも、慰謝料請求という形で訴訟手続によることもありますが、穏便に解決したい、なるべく大ごとにはしたくない、といった依頼者・相談者も少なくあります。
そのような事件の場合、弁護士から「まずは十分当事者間で話し合ってください」とアドバイスを受けることがあります。現に、当事務所に相談に来られた相談者の中には、既にそのようなアドバイスを受けた方もいらっしゃいます。しかし、当事者間で話し合いができるのならそれに越したことはないですし、そんなことは相談者も十分わかっています。相談者からすると、「当事者で話し合いにならないから、相談に来たんだ!」と、いうことでしょう。そこで、当事務所では「当事者間の話し合い」と「訴訟」の中間的手続であるADRを提案しています。以下、ADRについて詳しく説明していきます(写真は上野駅・特急ひたち)。
ADRとは
ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの略で、日本語では裁判外紛争処理手続といいます。同人誌に関する紛争のみならず、様々なトラブルについて、話し合いによる解決を促進するための手続です。具体的には、あっせん委員という当事者の仲立ちをする専門家(弁護士など)が間に入り、話し合いを行います(ADRの申立てをする側を「申立人」、ADRを受ける側を「相手方」といいます)。原則として当事者間で話をせず、あっせん委員を経由して話をすることになります。
手続自体は非公開で、訴訟のように厳格な手続によらず、何らかの合意があれば、あっせん委員の専門家の作成した「和解契約書」という形で両当事者の署名等が入った文書が作成されるので、当事者間の話し合いと、裁判手続の中間的な手続として利用されています。
このように、トラブルではあるものの、訴訟をするまでもない、あるいは訴訟に必ずしも適したものではない、しかし、当事者間の話し合いだと感情的になり話が進まないようなトラブルで利用されることが想定されます。他方で、デメリットとして、手続参加に強制力がないことから、相手方がADRに応じない場合、ADRによる解決はできないことになります。その場合、訴訟手続を検討することになります。
【参考】
〇 日本弁護士連合会紛争解決センター(ADR)
https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/other/conflict.html
〇 公益社団法人民間総合調停センター
https://minkanchotei.or.jp/
※ここでは、弁護士会によるADRについて紹介しています。弁護士によるものの他、裁判所が行う民事調停、労働局による個別労働紛争解決制度、貸金・借金などに特化した金融ADRなどがあります。各ADRによって、管轄、オンライン手続の可否、成約手数料の有無・多寡、その他各手続が異なります。
各手続の比較図
当事者間の話し合い、ADR、訴訟の3つを比較した図を示します。
費用面では、弁護士を入れた場合は別ですが、当事者間での話し合いだとほとんど費用はかかりません。もっとも、少額の場合、ADRより訴訟の方が安いこともあります。
手続の厳格さとしては、訴訟手続がもっとも厳格です。民事訴訟法等の法律にのっとった手続を踏まなければなりませんし、謝罪や説明責任など、非金銭的に請求については少なくとも判決手続で実現することは困難です。他方で、ADRは弁護士に依頼せずに手続をすすめるケースも多く(当事務所でもサポートしています)、訴訟ほどの厳格さもありません。
強制力ですが、訴訟の場合、何らかの形で決着がつけば、内容にもよりますが強制執行が可能です。また、手続に応じない相手方に対して、欠席判決という形で相手方敗訴判決がなされるという不利益を与えます。そのため、訴訟は手続について強制力があります。他方で、ADRには強制力がありません(なお、裁判所の即決和解や、公正証書の作成などを併用することで強制力をもたせる運用をすることがあります)。当事者間の話し合いでも同様です。そのため、相手方が紛争解決に不誠実な場合、ADRではなく訴訟を検討することになります。
手続の公開ですが、ADRは非公開となります。訴訟手続は、憲法上の公開原則との関係上、訴訟記録を含め原則として公開となります。
当事者間の顔合わせですが、当事者同士の話し合いでは、裁判所やあっせん委員といった間に入る者がいないため、当事者同士が直接対峙します。それがために感情の対立を誘発することもあります。訴訟も、弁護士が代理人とになる場合を除いて、原則として当事者間で顔を合わせて手続を進行します。ただし、和解手続に移行すると、原則として顔合わせをすることはありません。ADRは、前述したようにあっせん委員が間に入りますので、当事者間で顔を合わせることはありません。
各手続についての特性を活かしながら、ご自身の抱えるトラブルの性質に応じて手続選択をすることになります。ウィステリア・バンデル法律事務所では、こうした手続選択についても、丁寧に説明の上アドバイスさせていただきます。
ADRによる解決に適したトラブルとは
ウィステリア・バンデル法律事務所での取り扱い経験を踏まえ、ADRによる解決に適したトラブルはおおむね以下の通りになるかと思います。
〇 相手方が感情的になり話し合いが出来ない場合
〇 金銭請求ではなく、謝罪や説明を求める場合
〇 そもそも紛争を大ごとにしたくない場合
〇 まずは、相手方の出方や反論等をうかがいたい場合
どういった場合が適しているかは、個別具体的事情によりますので、一度ウィステリア・バンデル法律事務所にご相談ください。