下四法の知識不足について

 司法試験受験生の皆様、いかがお過ごしでしょうか。残り2か月、各予備校の模擬試験もひと段落し、いよいよ直前期の追い込みをはじめるところといったところでしょうか。前回のコラムで、「司法試験模擬試験を添削しての感想」について言及しましたが、今回はその補足的意味で、下四法(行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)について書いてみたいと思います。

 2015(平成27)年に短答式が7科目から3科目となり、行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法(以下、「下四法」とします)は短答式で出題されなくなりました。そのため、下四法について、条文レベルの誤りが顕著になり、場合によってはそれが大きな点差の原因になることもあります。論文式では六法を参照することは可能なので、必ずしも細かな条文の文言まで記憶する必要はないのですが、それでも条文が存在していることや、条文を探す、見つけるためにも、条文知識は必要になります。

 特に、民事訴訟法・刑事訴訟法は、合格後司法修習に行けば当然必須になりますし、そうした知識不足は単に司法修習で恥をかくだけでなく、二回試験不合格という最悪の事態も招きかねません。また、各種就職活動の面接で、知識不足が露呈すると内定を採れないこともありえます。実務に就いた後も、一般的な弁護士であれば民事訴訟法・刑事訴訟法が重要であることはいうまでもなく、これらの基礎的知識り欠如は実務家として恥をかくだけでなく、弁護過誤として懲戒、損害賠償ということにもなりかねません。最近では、ネットで「無能」と叩かれるリスクもあることから、弁護士として信用問題にもつながります。

 翻って司法試験は、実務家登用試験です。採点者は、「この受験生を法律実務家として世に送り出してよいか(厳密には「司法修習に耐えうる能力があるか」でしょうが)」という観点で採点します。もちろん試験ですので、配点や採点基準はあります。しかし、基礎的知識や「六法を参照できるはずの」条文の誤りは、採点者に「この受験生を法律家として世に送り出すのはまずいだろう」という印象を抱かせます。現に私も、同様の感想を抱いたことは一度や二度ではありません。

 もちろん、軽微な誤りや見落としは、大きなダメージとはなりません。その程度の誤りはほとんどの受験生もするわけですし、逆に気付いていれば加点事由になるくらいです。
 しかし、結論を左右する、ポイントを外すといったレベルの誤りはどうやっても言い訳ができません。私の採点例でいうと、答案に「×印」をつけかつ、それを積極減点事由としている答案や、「(かなり)まずい」などとコメントしている答案です。点数以前の問題として、受験生として相当危険な状態であることを自覚してください。

 返却された模擬試験の成績や講評等を踏まえて、本試験までがんばってください。
(2020.03.25)

 
 

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