司法試験模擬試験を添削しての感想

はじめに

 司法試験受験生の皆様、いよいよ司法試験まで残り2か月、各予備校の模擬試験も開催されています。私も、受験生の皆様の答案の添削に追われる日々となっています(今年の模試でいえば、約500通くらいになります)。そこで、受験生向けに、模試を添削した感想を書いてみたいと思います。なお、個別の問題についての言及は、個々の予備校との業務秘密の関係上、詳細は差し控えさせていただきます。また、個別の問い合わせ等は、受験指導申込みにて対応させていただきます。

演習・答案作成不足

 相当数の答案で、演習等のいわゆるアウトプット不足が散見されます。私も通算8,000通以上(現在は10,000通近くになっているかもしれません)の答案をみていると、「書きなれている」受験生かどうかはよくわかります。もちろん、知識の問題等もありますが、たくさんの問題演習を行い、弁護士や合格者等答案を添削してもらうことこそが、王道たる勉強方法です。ごく一部の優秀層を除き、アウトプット量と成績は比例します。そして、このアウトプット不足は後述するすべての問題点にも帰着しますので、これらの問題点を意識しながら、答案作成・添削・復習を怠らないようにしてください。

問題文の世界・全体像をイメージできていない

 問題文の世界を全体像をイメージできていない答案が多いです。問題文のイメージができていないので、問題の所在を発見できず、事実の指摘や評価についても頓珍漢なことを書いてしまうわけです。採点実感でも、「地に足が着いておらず,何が問題であるかを見抜けていない」(平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問))、「各犯罪類型に該当する典型的事案をイメージできていないのではないか。」(平成24年司法試験の採点実感等に関する意見(刑事系科目第1問))などといわれています。

答案バランスについて

 司法試験は多くの論点について書かないといけないため、メリハリつけた論述が必要になります。そのため、争いのない部分、前提部分については、簡潔な記載にとどめ、核心的争点について厚く書くようにしてください。そして、「核心的争点」を発見できないということは、問題の全体像を把握しきれていないこと、ひいてはアウトプット量不足にも帰着します。

採点実感軽視・無視

 採点実感は、受験生にとって重要かつ必読であることに異論を挟む余地はありません(なお、予備試験受験生であっても同様です)。採点実感を読んでいない、理解していないということは、それだけで大きなマイナスとなります。採点実感を読んでいない人は、最優先事項としてすべての採点実感を熟読するようにしてください。

字が読めない・読みづらい

 予備校にとって受験生は「お客様」であり、採点者が軽々に字が読めないを指摘したり、それを理由に減点したりすることは「お客様」からのクレームの原因になります。そのため、形式面については過度に注意しない予備校もあります。しかし、本試験において、受験生は「お客様」ではありません。そのため、採点者が「字が読めない」と判断すれば、容赦なく減点する可能性が高いです。そうでなくても、採点者の誤読等による不利益を「受験生が」受けることなります。
 これを形式的な問題として軽視する講師等もいるようですが、はっきりいって致命的欠陥です。採点実感でも毎年のように言及があるところですので、採点者側も「採点実感軽視・無視」として、減点する正当性も認められます。
 上記予備校の事情から、目の余るものについてのみ、オブラートに包んで指摘しています。そのため、コメント等で字について言及のあった方は、かなり深刻な事態ととらえてください。その上で、とにかく読める字を書くように努めてください。

理由不備・説明不足

 ここでいう「理由不備・説明不足」は、ひとつの事実・法的評価を示すための理由や説明がないという意味です。おそらく、受験生は頭の中ではわかっているのでしょうが、その思考過程を答案に示さないと、採点者からすると唐突感しかありません。時間がないのでそこまで書いていられない、という批判もありますが、別に長々と書く必要はなく(それはそれでマイナスです)、簡単に一言二言で説明すれば十分です。その一言二言で答案の印象はかなり違いますし、成績にも大きく影響します。
 面倒ですが、理由・説明も忘れずに書くようにしてください。

おわりに

 すべての論点をきちんと書いた答案はむしろ少数で、一応の水準上位から良好の下位までの受験生でも、致命的な論点落としが散見されました。いわんや、ほとんどの受験生が気づかなかった論点もあります。その上で、合否を分けたのは、上記諸点の欠陥が相対的に少ない答案です。極論すると、答案構成は同じでも、上記諸点の欠陥の有無で、合否を含め順位は大きく変わるということです。

 まだ、本試験まで2か月あります。模試の成績や講評等を踏まえて、本試験までがんばってください。
(2020.03.15)

 
 

一覧に戻る