法科大学院入試の合格、おめでとうございます。ウィステリア・バンデル法律事務所弁護士・事務職員一同、心よりお祝いを申し上げます。
ウィステリア・バンデル法律事務所では、司法試験受験生向けに個別指導を行っていますが、法科大学院未修1年目の方も多く指導しています。その指導経験を踏まえて、本稿では法科大学院の未修者コースに入学が決定した皆様に向けて、入学までどのように過ごせばよいかお話ししたいと思います。
大学卒業後そのまま法科大学院に進学された方、社会人経験を積まれて入学された方など、皆様様々な経歴をお持ちかと思います。中には、既に法学部や予備校等で相当の学習をされた上で未修者コースに入学したという方もいらっしゃいますが、これまでまったく法律の勉強をしたことがないという方もいらっしゃいます。前者を隠れ既修、後者を純粋未修と呼ぶことがあるようですが、いずれにしても入学した後は「未修者コース1年生」として、純粋未修者であったとしても隠れ既修者と肩を並べて対等な立場で学生生活を送らなければなりません。もちろん、卒業後(あるいは在学中)の司法試験も対等な立場で受験します。
未修・既修問わず、法科大学院生の目標は司法試験合格ということになると思いますが、多くの法科大学院で、進級要件を課しており、成績によって留年をする方もいらっしゃいます(必修科目のGPAで判断されることが多いです)。実際にウィステリア・バンデル法律事務所でも、司法試験合格よりもまず進級を目標として、個別指導を受験される方が多くいらっしゃいます。
ところが、純粋未修の方は、法科大学院での授業が初めての法律の勉強になります。過密な授業スケジュールの中で、多くの純粋未修者は授業についていくのがやっと、いえ授業についていくことすらできない方も多くいらっしゃいます(隠れ既修の方も大変そうですが)。答案作成すらまともにできないまま、定期試験を迎え、形式・実質ともにまったくあさっての方向で答案を書いてしまって、散々な成績をとってしまい、留年してしまったという方もいらっしゃいます。
私見ではありますが、その法科大学院生の質どうこうの問題ではなく、きちんと法律文書を書けるだけの能力を身につけさせなかった教員及び法科大学院の指導体制の問題だと思いますが、それをここで論じても仕方ないので、法科大学院における「未修者1年生」がそうした状況にあることをまず理解していただきたいところです。
その上で、入学が決まってから実際の入学までに何をするか、ということが問題になりますが、おおむね、以下の順番で勉強をしてください。
1. 定評ある講師・予備校の基礎講座・入門講座を受講する。できれば、2回回す。
2. 司法試験短答式を解く。入学前に、令和以降の過去問を網羅しておくことが望ましい。
3. 短めの事例演習問題ないしは予備試験論文過去問をみて、答案構成をしてみる。
4. 3について実際に答案作成し、個別指導などで指導を受ける。
上記の合間に、実際の民事訴訟、刑事訴訟の流れを把握する。
特に、1は必ず受講してください。基本7科目(特に、憲法・民法・刑法)の全体像がわからないと、法科大学院の授業で教員が何をしゃべっているか理解できなくなります。1回受講しただけでは最初のほうを忘れてしまう可能性があるので、できれば2回受講してください(最近だと、オンライン配信のものが多いので、いったん購入すれば期間中何回も視聴できるものもあります)。
それと合わせて、短答式・論文式などアウトプットを意識してください。短答を解いておくと、おおむね法科大学院(司法試験)で要求される知識水準がわかってきます。論文は、前述したように、定期試験対策にも直結します。なお、予備校答案を嫌う法科大学院教員も少なくないですが、まずは答案作成の作法・型を覚えるためにも、いったんは予備校等の書き方をマスターしましょう。その後、教員の癖や志向に応じて適宜、修正すればよいでしょう。
民事訴訟・刑事訴訟の流れですが、実際の訴訟や手続の流れの上で、法律論が展開されることから、これを知っておくことは法科大学院生として当然の前提になるかと思います。少なくとも、そのように考える教員はいるようです。もちろん、詳細な手続まで入学前に把握する必要はなく、大雑把なところで結構です。
入学が決まってから、授業開始まで短い場合で1か月半ほど、長ければ半年以上あります。皆様の置かれている立場もあるので、どこまでできるかは人それぞれといったところではあります。しかし、入学後授業はじまってから勉強を開始することは、それだけ留年リスクは高くなります。厳しいことを言いますが、入学が決まった時点で、既に勉強がはじまっているということを自覚していただきたいと思います。
(2025.10.24)