弁護士に法律相談というと、法律事務所での相談の他に、市役所や区役所などの自治体(以下、「市役所等」とします)の無料法律相談があります。市役所等の法律相談は、比較的利用者数は多く、私も担当のたびにすべて予約で埋まっている状況です。その上で、市役所等の法律相談を検討されている方も多いと思いますので、弁護士目線で書いてみようかと思います。
市役所等の法律相談は、原則として市役所等に予約を取って、予約の日時に市役所等に訪れて相談を受けるものです。大阪の場合、当該市民(あるいは区民)が対象となり、原則として1年で1回となります。平日昼間(午後)が多いですが、市役所等によっては夜間や土日に開催しているところもあります。また、昨今の新型コロナウイルス感染症との関係から、対面式ではなく電話相談としている市役所等もあります。いずれも、原則として30分無料となっています。
相談担当弁護士は、弁護士会から日時と市役所等割り当てられて、相談当日に市役所等を訪れます。この時点で、誰がどのような相談があるのかわかりません。そして、開始15分くらい前に市役所等に到着すると、事務的説明とともに担当者から相談一覧表を受け取ります。このときはじめて、相談者の住所・氏名と相談「概要」がわかります。「概要」といっても、「離婚の件」「息子の借金について」くらいしかわかりません。なお、相談者側も相談開始まで弁護士の氏名等はわかりません。
これを前提に法律相談を行うので、30分では到底足りません。多くの場合、20分くらい話を聞いて残り10分で事案整理、回答となります。それでも時間が大幅に足りないので、回答も中途半端になります。誤った回答をしないように、一般的な説明で終わることもありますし、複雑に事案になると30分で事案把握は不可能です。時間があれぱゆっくり事情を聴いて回答したいのですが、上述の通り予約で埋まっているためこの30分は延長できません。また、相談者側で弁護士を選べないため、相性が悪かったという意見もあります。そのため、市役所等の法律相談の満足度はお世辞にも高いとは言えません。決して市役所等の相談担当弁護士の質が悪いのではなく、時間その他様々な制約上やむを得ないところがあるからです。
そうすると、市役所等の法律相談はまったく無意味なものかというとそうではなく、次の法的救済手続につなぐためのアドバイスをうけることができます。「このままでよいのか、自分で解決できるのか、きちんと弁護士に相談・依頼したらよいのか」というアドバイスであれば、初見の30分の相談でもなんとか回答できることが多いです。換言すると、市役所等の法律相談ですべて完結・満足させることは期待すべきでありません。それでも、時系列や登場人物を紙にまとめて(ただし、長いと読めないため1~2枚が理想)、担当弁護士にみてもらうとよりスムーズな相談になると思います。また、登記簿・契約書なども持参してください。
市役所等の法律相談は、利用者は多いですが、過度な期待をしないほうがよいでしょう。きちんと法的課題を解決したいのであれば、ホームページ等で調べて相性のよさそうな弁護士を選び、正式に法律事務所で法律相談の申込みをすべきです。
(2020.07.19)
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