相談・依頼をお断りする場合

 弁護士には、医師や他の士業と異なり、受任義務はありません。また、相談や依頼を断るにあたって理由を告げる義務もありません。実際に相談したはいいけれども、最終的に受任を拒否されたということもあります。おかしいと思われる相談者・依頼者の方もいらっしゃるかと思いますが、法律や弁護士職務基本規程等の関係上、問題はないとされています。

 弁護士の職務は高度な独立性が要求されます。依頼者の利益擁護もありますが、それと同時に社会正義の実現や法令遵守も要求されます。依頼者の要求がこれらに反する場合、弁護士として依頼を受けることはできません。
 
 それならば、理由を明示してもよいのではないか、ということになりますが、弁護士が依頼を受けることができない場合として、利益相反があります。利益相反とは平たくいうと、すでに相手方から依頼を受けている状態で、依頼を重ねて受けることをいいます。先ほど述べたように、弁護士の職務は依頼者の利益擁護ですので、相手方から依頼を受けていれば依頼者の利益同士が衝突するわけです。ですので、利益相反にあたる場合、依頼を受けることができないのです。そのうえで、依頼者との関係で守秘義務があります。理由を明示するということは、相手方当事者との関係で守秘義務に反することになりかねません。そして、利益相反の場合に限定して理由明示義務を免除すると、理由を告げないということは、相手方から依頼を受けているということになるので、包括的に理由明示義務がないということになるわけです(※)。

 そして、ウィステリア・バンデル事務所は事前にホームページで類型化して公開していますが(当サイト「ご依頼をお受けできない場合」参照)、個別具体的な事情として受任拒否事由にあたるかどうかは、最低でもご相談申し込みがないとわかりません。そのため、相談にあたってできる限り、詳細なご説明をお願いします。特に、当事者の氏名(わからなければペンネームでもかまいません)はきちんと明示してください(当サイト「相談内容を説明する方法」参照)。仮に、受任しないということになっても、いただいたご相談内容・情報を第三者に漏らすことはありません。
(2019.05.25) 

※ 受任拒否の理由明示義務がないことの理由については、いろいろあると思いますが、利益相反と守秘義務の関係がもっとも説明としてわかりやすいと考えます。


 

一覧に戻る