民法改正と受験指導

 既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、2017(平成29)年にいわゆる民法の大改正(以下、「債権法改正」とします)が行われ、2020年4月1日施行予定となっています。我々法律家だけではなく、企業等の法務関係者の方も、債権法改正により実務的に大きな影響を受けています。

 そうすると、司法試験をはじめ法律系資格試験のほとんどが民法がメイン科目である以上、その影響は計り知れない、とお考えの方も少なくないかと思います。しかし、私の知る限り予備校や受験指導学校(以下、「予備校等」とします)は、少なくとも今年の受験生を対象として改正法の指導を行っていません。と、いいますのも、先ほど述べたように債権法改正の施行は2020年です。債権法改正がいつ反映されるかは試験によって異なりますが、少なくとも今年の受験については改正法が反映されません。

 すでに、ある程度債権法改正について勉強されている方であればお分かりかと思いますが、瑕疵担保責任の廃止や時効制度の大幅変更など、旧来の民法の考え方とは大きく異なります。判例法理を明文化したものもありますが、条文構造が異なるものも少なくありません。そうすると、現時点で債権法改正について学習すると、かえって受験生を混乱させるだけであり、少なくとも今年の受験生にとって有害無益と判断したため、予備校等は債権法改正についてほとんど言及がないのです。
 ウィステリア・バンデル法律事務所も例外ではなく、少なくとも債権法改正に対応していない受験については、原則として債権法改正に言及しません。なお、平成17年の会社法成立、平成8年の民事訴訟法改正でも同様の悩みはあったようです(あいにく私はその時代の受験生ではないので、詳しくわかりませんが)。

 問題は、法学部生及び法科大学院生です。私もすべての大学・法科大学院を調査したわけではないので詳しくはわかりませんが、債権法改正を踏まえた授業が行われ、定期試験でも債権法改正を前提とした出題がされているところもあるようです。法学部や法科大学院はあくまで教育機関なので、教育目的という趣旨であれば、債権法改正を意識した学習をすることは有益です。また、法律職に携わる以上、債権法改正を無視するわけにはいきません。しかし、司法試験その他法律系資格試験を受験される方の多くは予備校等に通っていることからすると、予備校等の教育とかい離が発生します。現に、私が論文等を添削すると債権法改正後の条文で書いている人が少なくありません。そうなると、前述したように「資格試験受験」という目的の前では、債権法改正の学習は有害になりえます。

 当事務所は、債権法改正につきましてもできる限り柔軟に対応しますので、ぜひ一度ご相談ください。
(2019.03.30)


 

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