タイトルの無断使用

 作品の中身を無断で使用することは著作権の問題が発生しますが、タイトルの場合はどうでしょうか?わかったようなわからないタイトルにまつわる話を簡潔にしてみようかと思います。

 まず、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(著作権法第2条第1項第1号)。そうすると、作品のタイトルも著作物にあたりそうなものですが、原則として著作物には当たらないとされています。それは、著作権法第20条が「その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し」とあり、著作権法は「著作物」と「題号(タイトルのことです)」を区別していることから、著作物にタイトルは含まないと解釈されています。つまり、タイトルの無断使用は原則として著作権侵害にはあたらないということになります。

 そうすると、タイトルの無断使用はまったく問題ないのかというとそうではなく、まずタイトルが商標登録されていれば、商標権侵害となる可能性があります。たとえば、有名なRPG「ドラゴンクエスト」は株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスが商標権を有しています(ロゴを含めたら65件ヒットしました)。あらゆる使用が禁止されるわけではなく、商標登録の際に指定された「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」と同一ないしは類似していることなどの要件が必要になります。もっとも、「ドラゴンクエスト」は結構幅広くカバーしているようですので、商業的利用は商標権侵害となる可能性が高くなります。
 また、商標登録していなくても、不正競争防止法違反になる可能性もあります(同人誌であっても不正競争防止法の適用はありえます)。タイトルであっても、意に反する改変は著作権法上の同一性保持権侵害にもなりえます(同一性保持権は、著作物とタイトルも保護します)。民法上の不法行為に基づく損害賠償もありえます。

 つまり、タイトルの無断使用が著作権侵害にあたらないといっても、それで違法性がないということにはならないわけです。タイトルの無断使用につき、ある日突然警告書が届くこともありますし、損害賠償請求や、使用の差し止め、逮捕・処罰といったこともありえます。

 こうした知的財産の分野はわかったようなわからないところが多く、実務家や学者の中でも解釈が分かれる部分が多々あります。被害者・加害者にならないためにも、疑問があればあらかじめ弁護士等専門家に相談するようにしてください。
(2019.03.22)
 

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