条文の指摘について

 司法試験に限らず、法律系の論文式試験は条文を指摘することが求められます。その際、条文番号だけではなく、項・号・前段・後段・本文・ただし書きなど、正確に指摘しなければなりません。特に以下についてはきちんと指摘してください。

○ 刑事訴訟法第321条第1項第2号前段・後段
※前段と後段は要件も性質も異なります。なお、前段で特信性が要求されるかは争いがあります。

○ 刑法第240条前段・後段
※強盗致傷と致死は別の犯罪類型です。なお、同じ刑法第240条後段ですが、強盗殺人と強盗致死も別の犯罪類型です。

○ 刑法第130条前段・後段
※前段は建造物等侵入罪、後段は不退去罪であり、まったく別の犯罪類型です。

○ 刑法第54条第1項前段・後段
※前者は観念的競合、後者は牽連犯です。

○ 憲法第21条第1項・第2項
※表現の自由は第1項の問題です。

条文の指摘は正確にいうと「第」が必要になりますが、試験や実務起案などでは省略することができます。しかし、刑法第230条の2などの枝番条文の場合、第1項、第2項を指摘する際「第」がないと「230条の21項」となり、ものすごく違和感があります。これについて、決まった書き方はないと思いますが、「230条の2第1項」「230条の2,1項」とすることが多いようです。いずれしても条文部分と項・号部分を識別して指摘するようにしてください。

また、準用条文について、準用条文→被準用条文の順で書くのが正確かと思います(刑事訴訟法第222条第1項本文、第111条第1項前段など)。実際の起案にあたってはどちらでもよいですが、必ず準用条文、被準用条文両方正確に指摘してください。

法令名を省略する際、原則として正式名称を一度指摘したうえで、かっこ書きで省略を示すようにしてください。たとえば、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、「風適法」と略す)第2条・・・」などです。略する法令名は基本的には答案作成者の任意でよいと思いますが、一応ある程度世間的に通用する名称にするとよいでしょう。上記の例だと、「風適法」や「風営法」になります。また、単に「法」としてもかまいませんが、同一問題で複数法令を指摘する場合、他と識別が困難になるため、できれば「風適法」などと略するのがよいでしょう。なお、「刑訴法」などように、略字使用がもともと許されているものもあります。
(2019.03.02)



 

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